第二十七回 九皐会 若竹能

2006/7/23(日) 午後二時開演 矢来能楽堂
相変わらずの敬称略で、書きたい放題。

『鉄輪』の見どころ

武蔵野大学名誉教授 増田正造
笑いを交えて、『鉄輪』の背景を。
「あなたがこの方の立場なら、どっちが第一目標?」
「連れ合いに死別された場合、奥さんは長生き、旦那さんは早死に」
「3×7=21日間、宇治橋で水に浸れば、鬼に成れると」
狂言口開、、、笠が中入り前の演出のポイント」
「今日の面は、生成。鉄輪か橋姫が普通です」

仕舞

簓之段 坂 真太郎
源氏供養 観世喜之
地謡 弘田 裕一、長沼 範夫、小島 英明、桑田 貴志


『簓之段』は、「自然居士」の一部分。
先週の国立能楽堂と違い、近いせいか、緊迫感がひしひしと伝わってきて、
やや心配になったり。
坂さん、もしやしてタイプとして私と似てますかね?
私は、プレゼンをやらされると、顔色変えず、落ち着いた感じでゆっくりやるけど、
内心、ひじょーに、緊張です。
違うかな?


『源氏供養』、観世喜之氏。
見事、としか言い様がありません。
その滑らかな舞。


見どころを説明された、増田氏が、
「最近、自分が年寄りになって、年寄りの能楽師が好きでなくなった」
といったことを言われてました。
(いや、若い人の舞が素晴らしい、という主旨ですけど)
奇しくも、ニ連打の、若い人と経験を積まれた方の舞。
舞は、とても体力が必要。
ゆっくりとした所作を滑らかに行うには、非常な筋力を必要とする。
ミュージカル等が若い人ばかりなのは、体力的に持たないからだと思う。
しかし、能楽の舞は、単純な筋力だけではない。
多分、増田氏が、好きでなくなった、と言ったのは、
年をとって、ずるくなったから、かもしれない。
経験を積まれた方の舞は、収まる所作が無駄なく自然に収まる。
経験により、知っているからだ。
力を抜くとこ、入れるとこ、そして、収めるところ。
そのずるさが導くのは、美しい舞。
いやー、す、ば、ら、しー!!!


経験者が尊重される世界。
好きですね。
若くないと活躍できない世界なんて、刹那的なもの。

狂言『隠狸』

高野 和憲、深田 博治
笑わせてもらいました。
狸の作り物は、なくても良いかもね。


太郎冠者が狸を捕まえて、小遣い稼ぎをしていると聞いた主人。
けしからん、と問いただす。(何がけしからんのかの?)
太郎冠者は、とぼける。
今日も捕ったに違いないとにらむ主人、罠をかける。
「ウソをつかない人から聞いたので、もう狸をあてにして、
 狸汁にしようと、客を呼んでる。どうしよう?」
「さあ、どういたしましょう?」
「しかたない、客も来てしまうだろうから、市場に行って買ってこい」
太郎冠者、退場。(狸の作り物を取りに行ったらしいぞ)
しかし、主人、なぜそんなに確信持って、しかも手のこんだ追い込みするかね?
でまあ、太郎冠者、今朝捕まえたのを売って、それから、
主人の言いつけに従うか、と考える。
(買ったことにして、お金をせしめよう、としないところが素直じゃの)
で、売れないうちに、主人に見つかる。
主人、市場にまで酒を持ってきて、罠継続。
酒の肴に舞を所望、、、。
おかしいよ、主人。
市場で酒盛り、舞を一指し、なんざ、、、。
市場の人、さぞや迷惑したろうに。

休憩

能だけの人、さすがにそんなにいないようですが、
能で謡本を広げてた、老婦人。
狂言の間、爆睡です。
うぬー。


そうそう、さすがに二回目。
ここまでは、結構大丈夫。
でもね、ここまでは、お囃子がないのです。
お囃子が入ると、、、。
やっぱり今回も、使い物にならない程、観能疲れしました。
今日はなんとか普通に働きましたが、なかなか起きられなく。
お囃子で右脳を揺さぶられ、能の世界に引き込まれる。
遺伝子レベルに刻まれてるのか、世界へのシンクロ率は異様に高い。
それだけに、世界で遊ぶと非常に疲れる。
シテ、ワキ、囃子の思いの衝突に、さらされてるからかしらん。


ま、もう一つ、だめーじなこともあったからかな?
ほとんどど真ん中ストライクを、振っちゃいけない気がして、見送ったのです。
んー、かなり後悔。
ん?何の話かって?
ま、いいじゃん、何の話でも。

能『鉄輪』

シテ 佐久間 二郎
ワキ 殿田 謙吉
ワキツレ 芳賀 俊嗣
アイ 深田 博治
大鼓 柿原 崇志
小鼓 鵜澤 洋太郎
太鼓 小寺 真佐人
笛 一噌 庸ニ


後見 遠藤 和久、小島 英明
地謡 駒瀬 直也、観世 喜正、中森 貫太、中所 宣夫、遠藤 喜久、鈴木 啓吾、奥川 恒治、古川 充


ご神託が、鬼の成り方、って、、、。
神職のアイが、シテに因縁のご神託を。
まあもう、恨めしいに凝り固まってるシテ。
こうなると、鬼にしてあげるのが、シアワセなのかも。
神託告げたら、アイは逃げちゃいます。
残されたシテは、狂気の舞を。
笠を投げ捨てる。
うむ、若い舞です。
力があり、エネルギッシュ。
そうそう、前シテの衣装は、濃紺の落ち着いたもの。
そして、上に羽織る唐織(?)は、金色の豪華なもの。
さぞや、財力ある、上品な奥方、、、なんですけど、、、


中入りして、場面転換。
ワキツレがちょこっと登場。
アイ、ワキツレ、出番ほとんどなしです。
ワキツレ、夢見が悪いんだけど、と陰陽師に相談。
ワキ、安倍清明は、人目で看破。
さすが、超有能陰陽師。(^^;;;
で、代わりの人形を用意。
坂さん、一畳台を持ってくるのですが、今回はすっすと。


で、後シテ。
生成です。
怖いです。
正面に座ってると、こっち睨んで来るわけです。
とーっても、怖いです。
、、、あの、、、多分、般若の方が怖くないです。
生成、橋姫は、怖いです。


んでまあ、まずは後妻を。
(正確には、後妻の人形を)
これでもかと、うちつけて、続いて旦那を、、、
というところで、三十番神の邪魔に会い、よたよたになりつつも、
一旦撤収。かつ、目に見えぬ真の鬼に昇格。
生成から本成ですな。


といったところでした。
お囃子。
小鼓方が、大柄で、掛け声が柔らか。
大鼓は、打ち方の妙か、耳をくすぐる。
面白かったのが、太鼓。
若い方と思うのですが、とってもはりきってて、楽しかったです。
掛け声も目だってました。


なんでしょうね、能楽の囃子を聴いてると、トリップします。
多分、観能疲れの大半は、お囃子のせい。
頭をぐらぐらゆすってくれます。
でも、たまらん。
作り物がばーんとありましたけど、囃子方の所作も含め、楽しめました。


さて、観世ニ連打です。
次は違うところにしたいかな。