言の葉散って、何をなす?

突然、昔話を思い出した。


数年前の誰かの誕生日に、海から昼ご飯に帰ってきたら、珍しく母親がいて、
食卓には馴染みの鮨屋の出前が。
そしてえらくご立腹。
「おやじさんに怒られた」とのこと。


ああ、おやじさんか。
おやじさんは職人です。
私や祖母が電話する場合、言葉に気をつけるし、だいたい奥さんが出るので問題ない。
なんとなく予想がついたが、何があったか聞いてみた。


「11時過ぎに電話して、注文したら怒られた」
はい、一点目、的中。
お昼近いと、おやじさんは握るのに忙しく、奥さんは出前に出ている。
タイミングとしては、最悪。
さらに、「注文時に何言った?」


「ほら、あんたの好きな堅い貝、あれがあるか聞いた」
二点目。
「堅い」という単語はおそらく、「古い、悪くなった」と受け取られたに違いない。
すると、「あんたのところでは、古いネタを出すのか?」という質問である。
そりゃ、怒るさ。
そういう場合、「噛み応えのしっかりした」といった言い回しにしなきゃ。
相変わらず語彙がないようで、、、。


なお、「堅い貝」とは、赤貝のヒモのことである。
コリコリした食感と濃縮された旨味が好み。


言葉は歩く。受ける側の頭の中で。
良い方に歩く言葉を使いたいものである。